身土不二(しんどふじ)有機農業辞典
身土不二(しんどふじ)
「体と土とは一つである」という考え方で、人間が足で歩ける身近なところ(三里四方、四里四方)で育ったものを食べ、生活することがよいとする考え方です。
生物はその生息している土地、環境とは切っても切れない関係にあるという意味合いで使われることもあります。
文献として最初に登場するのが、中国の仏教書「盧山蓮宗寳鑑」(ろざんれんしゅうほうかん)1305年、普度法師編(ふどほうし)といわれ、仏教界では身土不二(しんどふに)と読まれています。
食事を唱える医療関係者、料理研究家、さらに食・農・環境のあり方を探る生産者や消費者の間で、「地産地消」・「地域自給」などの言葉とともに、食にたいする思想、信条の一つとして用いられます。
人間は歩く土、考える土
人間の体、すなわち「身」と、そこの「土」は「不二」、二つではなく一体である、という意味である。明治30年代(1897年~1906年)に石塚左玄(いしづかさげん)陸軍薬剤監らが起こした「食養道運動」のスローガンとして使われたのが最初で、彼らは、わが住むところ三里四方(12キロ四方)もしくは四里四方(16キロ四方)でとれる旬のものを正しく食べることを運動の目標としています。
人の命を支えているものは食べものであるし、食べものは土が育てます。
海産物だって海底の土や森林から運ばれる諸要素によって生きているのです、もっとはといえば土が育んでいるようなものなのです。つまり、土が人の命、人間はその土そのもの、すなわち「身土不二」ということになるのです。
明治時代の思想家でもあった徳富蘆花(とくとみろか)は、「みみずのたわごと」と題する随筆の中で「人は土の上に生まれ、土の生むものを食って生き、而(しこう)して死んで土になる。我らは畢竟(ひつきょう)土の化物である」と書いています。まさしく人間は、歩く土、考える土、語る土、恋する土なのでです。
その地質、土質は場所によって大きく異なります、つまりなるべく近くの安全で健康な土から生み出された旬のものを食べるというのが食養道の基本理念となっていますし、医食同源、薬食一如という農・食・医を総体して捉えて表現されているのです。
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